奥田愛基(SEALDs)独白「奥田っていたねーとか言われても、それで全然いい」

荒木経惟との撮影が終了し、誰もいなくなったスタジオで「去年の夏と似ている。人生から試されているみたいな」と奥田は言った。国会前デモが終わり、今、自分が置かれている状況について思うことは山ほどあるだろう。ポジティブとネガティブの間を揺れ動きながら、それでも前に進もうとする奥田の今の心境とは。

初出:『Quick Japan』vol.124
Text:磯部涼 photo:荒木経惟

2016年3月15日公開

──今回、『Quick Japan』のリニューアルにあたって「巻頭特集は奥田愛基で行こう」ということになったわけです。渋谷駅にも奥田くんの顔の広告がばーんと出ているはずで。

奥田 やばいですね……。

──それにしても、昨年の夏ごろから徐々に奥田くんが時代のアイコンとして扱われるようになっていきましたよね。ただ、〈SEALDs〉はもともとはそういったやり方とは正反対の性格を持っていたわけです。個々人が横につながった、カリスマが存在しない運動だった。もちろん、今もそうですし、たとえば、〈SEALDs〉自身が編集した書籍『民主主義ってこれだ!』(大月書店 15年)なんかはそのような作りになっていて、誰かひとりが前面に出るわけではなく、メンバーそれぞれの主張がフラットに掲載されていますよね。一方で、メディアは奥田愛基にばかり取材したがる。奥田くんは、自分のイメージがひとり歩きして大きくなっていくことに関しては楽しんでいますか? それとも、葛藤していますか?

奥田 まぁ、半々ですね。今日みたいに、荒木さんに写真を撮ってもらえるようなことは単純に楽しいし、こんな経験ができて幸せだなって思います。一方で、僕の殺害予告をして捕まった犯人が、戸塚警察署に拘留されていて、今日、そこに右翼の街宣車が来るっていうんで、「絶対、戸塚駅使わないでね」っていう連絡が来て。そんなこと言われて落ち込まないわけないじゃないですか。だから、「有名になってどんな気持ちですか?」って聞かれること事体がげんなりするっていうか。「葛藤していますか?」って、してないわけないじゃないですか(笑)。まぁ、それを聞かれ続けること自体が有名になるっていうことであって。自分が信頼していた人に軽く言った話が記事になったり。それどころか、言っていないことをまるで言ったかのように使われたり。でも、この中で勝負しなきゃしょうがないっていうか。だから……「Daijoubu」って曲がありますよね。

──最近、注目されているYENTOWNっていうラップ・クルーの曲ですよね。

奥田 あれの「大丈夫じゃねぇけど大丈夫かも/大丈夫じゃねぇけど大丈夫だよ」っていうフックがすげぇ沁みるんですよね。実際、「大丈夫じゃないけど大丈夫だよ」って自分に言い聞かせながらやってます。だって、今後、どうなるかわからないし。「これが上手くいかなかったらどうするんですか?」とか、「本当はなにが必要だと思いますか?」とか、「本当はどうするべきですか?」とか、みんな聞いてくるけど、本当のことなんてオレにもわかんねぇよっていう。

──最近のインタビューで、「ただムカつくのが、『今後、奥田さんはどうするんですか?』って聞かれるんですけど『いや、おまえはどうすんだよ? 俺のことばっか聞いてんじゃねぇよ』みたいな」って言ってましたよね。

奥田 そうそう。インタビューされるたびに、毎回そう思います。観客席からみてる場合じゃないし、みんなお客さんみたいにしてちゃダメですよ。たったひとり頑張ったから全部オールオッケーなわけない。去年の夏、あれだけのことが起きたのは、みんなが動いたからで。結果的に自分が国会で答弁しただけです。ただ、誰かが行かなきゃいけなかったし、それを引き受けるっていうことはすごく覚悟のいることだなとは思いますね。なので、実際、楽しくないことなんて腐るほどあるし、でも、やっているときは「全然楽しいよ」って感じにしようと割り切っています。

──僕はSEALDsの中では奥田くんと牛田(悦正/UCD)くんに会うことが多いので、いつも、ふたりの性格が正反対というか、補完しあう関係になっているのが面白いなぁって思うんですけど。牛田くんは迷いがないじゃないですか。いや、もちろん迷っているんだろうけど、発言する時は「オレはこう思う」みたいに断言する。一方、奥田くんは「オレはこう思うけど、その意見もわかる」みたいに葛藤しているような言い方をしますよね。たとえば、先ほど話に出た、奥田くんの殺害予告を明治大学に送った犯人が19歳だったことに関しても、「思ってたより若いよ。若すぎる。なんでこんなことしか言えない出会いになったんだろう」「19歳。漢字とか微妙に間違ってて、(俺もちゃんと中学行ってないから、よく間違えるけど)脅迫状見た時に、なんか育ちとかあんまり良くないんじゃないかと思った。自分に似て、言っちゃ悪いけど汚い文字だった。僕は自分の汚い文字が本当にコンプレックスで、その手紙見た時も同じ嫌な感じがした」と、むしろ、犯人に共感するようなツイートをしていました。あるいは、「ネトウヨの書き込みを読んでいると昔の自分を思い出す」みたいなことも言っていたし。

奥田 そうなんですよ。2ちゃんねるが、自分が言っていないことをさも言ったかのように扱うデマ記事の温床になっているのは知っているんですけど、「そういえば、昔、オレも見てたな」って、よせばいいのに言いたくなるんですよね。なんでかわかんないですけど。

──ちなみに先ほど、「撮影中は悲しいことを考えていた」と言ってましたよね。どんなことを考えていたのでしょうか?

奥田 それは……。

──プライベートのこと?

奥田 そうっすね。まあこんなことやってたらいろいろなことに出くわすので。あと、もうひとつ考えていたのは、中央公聴会に出た時に、当初、用意していた原稿がすごいエモかったっていうか、まぁ、本番で使ったものも最後の方だけ、自分が本気で感情を込めて言えるパートを作りましたけど、もともとはそれ以外にも自分語りがあって。ただ、そのパートを直前で全部消しちゃったんですね。それは、「どうせ、国会に出たらいろいろ言うんだろ」っていうことで。「でも、そもそも、なんでオレがここにいなきゃいけないんだよ。しょうがないじゃん、他にやるやつがいねーんだから。そう思うなら、おまえがやれよ」……みたいな。そういう気持ちを書いたんです。で、さっきも、「オレ、今、荒木さんに撮られてるけど、どうせ、『奥田、また格好つけちゃって』とか言うんだろ? でも、そういうことじゃないからな。覚えとけよ、おまえら」みたいなことを考えていました。広告や雑誌を見た人がどう思うかは知らないけど、そりゃあ、オレだっていろいろありますよ。あんたがいろいろあるように、オレだっていろいろあるっていう話だし、あんたが動きにくいように、オレも動きにくい中でやってるんだよっていう。だから、これを見ているだろう人と戦う……わけじゃないけど、国会で議員の人たちに「寝ないで聞いてください」って言った時に、内心、「聞きたくねーのはわかるよ、オレだって来たくねーよ。でも、来たんだよ。だから、聞いてくれよ」って考えていたのと同じようなことを考えていました。頑張って格好つけるというか、格好つけられないから自分をさらけ出すというか。

──それは、テンションを高めるために、むしろ、悲しいことを考えてみようと思ったんですか? それとも、荒木さんに撮られているうちに自然と考えてしまったんですか?

奥田 そうですね。撮られているうちに自然と悲しくなりました。はじめは緊張してたんで、途中から、真剣というか、殺すか殺されるかぐらいの気持ちでカメラを睨んで。そうしたら、荒木さんが「すごい顔するね。そっちのほうがいいよ」って言ってくれて。「あ、やっぱりそうだったのか」って。でも、その後、「サシでやり合う時はそういう顔なんだろうけど、おまえがひとりの時はどういう顔をしてるの」みたいなことを言われて、そうしたら、めっちゃ暗い気持ちになったんです。自分でもなんでだかわからないんですけどね。

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クイック・ジャパン新装刊! 【特集】ニュージェネレーション2016 【第1部】奥田愛基(SEALDs) 2015年夏、安保法制に反対する国会前デモで一躍知られることになった奥田愛基。等身大の23歳としての彼の姿を追った。

  • プロフィール
奥田愛基(SEALDs) OKUDA AKI

平成4年、福岡県生。現在、大学4年生。SEALDsの中心メンバーのひとり。
SEALDs webサイト