本当にキラキラネームは低い文化圏から生まれるのか? 「きららちゃん」が語るキラキラネーム差別

<1>本当にキラキラネームは低い文化圏から生まれるのか?
   「きららちゃん」が語るキラキラネーム差別

2015年8月28日公開

こんにちは、セブ山です。

僕の「セブ山」という名前は、もちろんライター名であり、本名ではありません。

しかし、世の中には「え、それって本名なの!?」という方々もいらっしゃいます。

たとえば、騎士(ないと)君や、音符(どれみ)ちゃんといった名前です。

世間では、そのような「人名としては一般常識から逸脱した珍しい名前」は、キラキラネームと呼ばれています。

そんなキラキラネームですが、ネット上では、しばしば批判の対象になっています。

「バカ親のせいで子どもがかわいいそう」
「名前は、親からの最初のプレゼントなのに……」
「一体、親は何を考えているんだ?」といった否定的な声が、ほとんど。

どうも世間では「親としての自覚がなく、子どもをペットか何かだと考えている文化圏の低い層が自身の子どもにつける名前」と認識されているようです。

しかし、はたして、これは本当なのでしょうか?

時代と共に「名前の常識」は変化します。

「友蔵(ともぞう)」や「トメ」など、自分たちの祖父や祖母の時代に多かった名前が、今の自分たちの「名前の常識」と明らかに異なっているのも、また事実。

キラキラネームについて、バッサリと「ヤンキー親が悪い」と切り捨てしまっていいものなのでしょうか?

そこで今回は、実際にキラキラネームを持つ女性にインタビューしてみることにしました。

はたして、彼女は何を語ってくれるのでしょうか?

「普通の名前に憧れます」

セブ山「というわけで、本日はよろしくお願いします」

きらら「はい、よろしくお願いします」

セブ山「さっそくですが、あなたのお名前を教えてください」

きらら「“きらら”です」

セブ山「念のため、確認ですが、本名ですか?」

きらら「はい、本名です」

セブ山「珍しいお名前ですね。ちなみに“きらら”とはどんな漢字を書くんですか?」

きらら「それを言うと個人を特定されてしまいそうなので、内緒にさせてください」

セブ山「わかりました」

きらら「でも、ギリギリ読めないこともない当て字です」

セブ山「なるほど。ちなみに、年齢はおいくつですか?」

きらら「23歳です」

セブ山「やはり、お若いんですね。自分自身で、自分の名前をキラキラネームだと思いますか?」

きらら「思います。悲しいぐらいに思います。ダサいと思います……」

セブ山「ご自分のお名前は、あまり気に入っていないんですね」

きらら「全く気に入っていません。普通の名前に憧れます」

セブ山「普通の名前というと?」

きらら「ゆかちゃん、りかちゃんみたいに違和感を感じない名前にして世の中に溶け込みたいです」

「ご両親はヤンキーなんですか?」

セブ山「いつごろ、自分の名前はキラキラネームだと気付きましたか?」

きらら「小学生ぐらいから思っていました。私が小学生のころはまわりにキラキラネームのひとなんていなかったので、まさにキラキラネームの、先駆けみたいな感じでした」

セブ山「その時から、自分の名前は嫌だったんですか?」

きらら「『どうして私だけこんな名前なんだ……』とは思っていました」

セブ山「名前のことについて、小学生時代に友達から何か言われたことはありますか?」

きらら「う~ん、名前でのイジメとかはなかったんです。でも、まわりに自分と同じような変わった名前の子がいなかったので、お母さんに『なんでこんな名前つけたの!!』って泣きついたことは何回かありました

セブ山「その時、お母さまは何とおっしゃっていたんですか?」

きらら「毎回、お母さんは真顔で『なんで泣くの? きららって名前、可愛いでしょ!! 』の一点張りでした」

セブ山「なるほど…」

きらら「………」

セブ山「そう考えると、やっぱり、ご両親はヤンキーなんですか?」

きらら「いえ、ヤンキーではないです

セブ山「え、ヤンキーじゃないんですか!?」

きらら「全然、違います。むしろ、そこそこ有名な大学も卒業して、頭はいい方だと思います」

セブ山「じゃあ、一般に言われているような“文化圏が低いヤンキー親”というわけではなんですね」

きらら「そのはずなのですが」

セブ山「ご両親は何をされている方ですか?」

きらら「普通の会社員です。頭が切れて真面目なので、会社でも肩書のある役職についているみたいです」

セブ山「じゃあ、ご両親はなぜキラキラネームを命名されたんですかね?」

きらら「母は“まさよ”という名前なんですが、自分のよくあるありきたりな名前が嫌だったらしくて、子供は派手な名前にしたかったみたいです

セブ山「なるほど。キラキラネームを命名した理由は、名前のコンプレックスからきているんですね」

きらら「そのようです。そう考えると、まだ“きらら”でよかったと思います」

セブ山「というと、他にも名前の候補はあったんですか?」

きらら「あとから聞いたんですが、実は最初は、苺(いちご)ちゃんと名付けるつもりだったそうです

セブ山「い、いちごちゃん!? それはなかなかですね……」

きらら「もし、そうなっていたらと考えると……恐怖です」

セブ山「そうなると逆に、なんで“苺ちゃん”という名前を辞めちゃったのか気になりますね」

きらら「最初は、苺が好きすぎて“苺ちゃん”にしようと思っていたらしいのですが、
やっぱり派手すぎる→冬に生まれたから“冬にまつわる漢字”が入った名前にしたい→名前辞典ぱらぱら→冬にまつわる漢字が入った“きらら”を発見→珍しいしこれにしよう!となったみたいなのです」

セブ山「え、じゃあ、きららってお名前は名付け辞典に載っている名前なんですか!?」

きらら「そうらしいですよ」

「就活に不利かどうかって議論はめちゃくちゃ馬鹿っぽくないですか?」

セブ山「とにかく“名前の珍しさ・派手さ”を一番に考えられた名前なんですね。じゃあ、いわゆる、名前に込めた意味っていうものはないんですか?」

きらら「ん? どういうことですか?」

セブ山「たとえば、“正しい心を持った立派な人間になって欲しいから『正人(まさと)』と命名しました”みたいに、親が名前に込めた命名の理由です」

きらら「えっ!? みんな、そういうのがあるんですか?」

セブ山「……いや、う~ん、みんながみんなっていうわけじゃないと思いますが……。まあ、あってもなくてもいいものですからね」

きらら「本当ですか? 今、私、なんか気を遣われていませんか?」

セブ山「……話を変えましょう!」

セブ山「キラキラネームのせいで損したことはありますか?」

きらら「病院で呼ばれるのが、とにかく嫌です。その場にいるみんながこちらを振り向きます」

セブ山「損したことというよりは珍しい名前の人あるあるですね。もっと何か損したことはありませんか?」

きらら「男性からは、名前を呼ぶのが恥ずかしいと言われたことがあります」

セブ山「たしかに人前で『お~い、きらら~!』と呼ぶのは恥ずかしいかも」

きらら「あと、40歳くらいになった時に『きららおばさん』って呼ばれるのは考えただけで泣きそうです」

セブ山「未来の危惧ですか。たしかに、キラキラネームが話題にあがった時に必ず言われる『年取った時に恥ずかしいのでは問題』はありますね」

セブ山「ちなみに、きららさんの現在のご職業は何ですか?」

きらら「銀行で窓口業務をおこなっています」

セブ山「そうなんですね。銀行ってお堅いイメージですが、面接の時や入社後など、何か名前について言われたりしませんでしたか?」

きらら「う~~ん…」

セブ山「キラキラネームで損したこととして、職場でキラキラネームは差別されるという話をよく聞くのですが、その辺りはどうでしょうか?」

きらら「とくに職場でそういった体験はないですね。すごい名前だねーぐらいのものです。多分、みんな、気を遣って何も言わないでくれているんだと思いますけど」

セブ山「就職活動の時はどうでしたか? キラキラネームは就活で不利になるという噂も聞くんですが」

きらら「私は、不利だと感じたことはないですね。かと言って、得だとも思いませんが」

セブ山「なるほど。じゃあ、キラキラネーム否定派が喜ぶような、名前のせいで就活や出世で不利になった、という話はないんですね

きらら「ないですね。というか、そもそも、キラキラネームは就活に不利かどうかって議論はめちゃくちゃ馬鹿っぽくないですか? 優秀な人材を必死に探している企業が、名前で判断するとはとても思えないんですよね」

セブ山「たしかに、言われてみると、その通りかも」

きらら「実際に、そんな会社があったとしても、名前で判断するような会社に入りたいとは思わないし、たぶん、そんなバカな会社はすぐに潰れると思いますよ」

セブ山「おっしゃる通りです。正論です」

きらら「そういう都市伝説的な話は全部、なにかにつけてキラキラネームを馬鹿にしたい人が勝手に捏造した作り話なんじゃないですかね

「まさか、キラキラネームにカーストが存在するとは」

セブ山「じゃあ、逆に、名前で得したことはありますか?」

きらら「得したこと…? う~ん、得したことは一切ないですね」

セブ山「僕の予想としては。初対面の人に覚えてもらいやすいっていうメリットがあるかなと思ったんですが、どうですか?」

きらら「たしかに覚えてもらいやすいっていうのはありますが、初対面の人との飲み会の時は大抵、名前の話だけで終わるのはムカつきます。私は今後、あと何回、この不毛な時間を過ごさないといけないんだって思うので、結局は損していますね」

セブ山「なるほど。キラキラネーム側から見たら、もうその話(名前いじり)には飽き飽きしているんですね」

きらら「そうです。それに“名前をすぐ覚えてもらえる”っていうのは、諸刃の剣で、下手なことをしたらすぐに噂が広まって、なかなか悪い印象は消えてくれないんです」

セブ山「あー、たしかに! 僕の地元に、珍しい名前の放火魔がいて、もうそいつは罪を償って出所したんですが、いまだにその名前の珍しさから、地元では火事があったらそいつの名前が話題にあがりますからね」

きらら「人の噂も七十五日とは言いますが、キラキラネームの人はたぶん、それよりも長いです」

セブ山「そんなキラキラネームですが、本気で改名しようと思えば、法的な手続きを踏んで、正式に改名できるみたいですが、それはお考えではないですか?」

きらら「他の人の記憶とかも、全部入れ替わってくれるならぜひそうしたいですが、そんなうまい話はないので……。今さら、改名しましたってみんなに言う方が恥ずかしいなと思います」

セブ山「ちょっとわかるような気もします」

きらら「もう23にもなると、自分の名前は好きじゃなくても、もうこの名前で生きていかなきゃという半ば諦めみたいなものも出てきているので」

セブ山「いいこと言いますね。スヌーピーの名言botみたい」

  • プロフィール
セブ山 セブ山 SEBUYAMA

1984年生、高度情報社会文化心理人類学研究家。インターネットの闇の部分を体当たりで検証する記事を多数執筆し、「ネットの禁忌に斬り込んでいる」「SNSの怖さがよくわかった」「顔が生理的に無理」などの高評価を得ている。現在は「オモコロ」 「Yahoo!」 「トゥギャッチ」で記事を執筆をする他、太田出版より初の著書を刊行予定。
・公式ツイッター @sebuyama