全アキバが泣いた! 自伝的ゲーム青春グラフィティ『ピコピコ少年 TURBO』の発売を記念して、著者である押切蓮介さんと前作『ピコピコ少年』からの愛読者である音楽ユニット「YMCK」の中村智之さんによる初対談が実現! そして、そこには中村智之さんの実妹であるマンガ家、中村明日美子さんの姿が!
文=多根清史
―――この度は『ピコピコ少年 TURBO』の出版、おめでとうございます! ということで、今回は著者の押切さんと8ビット音楽ユニット「YMCK」の中村智之さんに対談していただこうと思うんですが……せっかくなので、ご兄妹の中村明日美子さんにもお越しいただきました!(笑)
明日美子 まあ、さっきから話は盛り上がってますけど(編集部註:取材前から押切さん&中村さんはゲームをプレイしながら大盛り上がり)、途中から全然ついていけてないです(笑)。
―――スーファミと『ストⅡ』のソフトは編集部で用意したんですが、中村さんは今日のために、わざわざPCエンジンを持参いただいたという(笑)。
中村 黒PCエンジンを買ってきたんです。

押切 僕が車にはねられた話が懐かしいですよ(編集部註:『ピコピコ少年』に収録のエピソード。押切少年はPCエンジンを探してさ迷っている際、車にはねられてしまう)。
中村 その頃のコレクションも、今日は持ってきたんですよ(名刺入れファイルを取り出して)。
押切 Huカード(PCエンジン用のROMカートリッジ)だ! うわー懐かしいわ。
明日美子 近所の兄ちゃんみたいになってますね(笑)。
押切 懐かしいなあ。(ファイルの中のカードを指差して)僕、いまは『ストⅡ’』)ぐらいしか持ってないんですよ。貧乏時代のときに全部売っちゃって(笑)。(PCエンジン)GTでやってましたね。
中村 GTだとボタンが足りないじゃないですか。
押切 足りないです。だから、スタートかセレクトを押すと、パンチボタンがキックに変わるんです。
中村 それはもう別ゲームですね(笑)。
押切 でも携帯ゲーム機で『ストⅡ』ができる優越感があって、友達に自慢してましたね。
明日美子 うちはゲームギアがありましたよ。携帯するにはちょっと大きい。
―――2時間で電池が切れて、RPGをクリアできないんですよね(笑)。
中村 あの頃は居間にしかテレビがなかったから、どうしても親の前でゲームをやらないといけなくて。でも、携帯ゲームだといつでもできるじゃんってことで買ったんです。
明日美子 だから家族旅行にもちゃんと持ってきてたんですよ、重いのに(笑)。
中村 でも電池は一度も入れたことなかったですね。必ずACアダプターにつないで。
―――あれは家で遊ぶ携帯ゲーム機ですよね(笑)。では、みなさんのゲーム遍歴をおうかがいできますか?
中村 僕は『ピコピコ少年』を何度も読んでいて、特にPCエンジンの話に親近感を覚えたんですよね。
押切 そうですか。僕もけっこう屈折した青春時代を送ってきたんですけど、共感してもらえるところがあったら嬉しいです(笑)。
中村 PCエンジン派って周りにいなかったんですよ。
押切 そう、みんなスーファミに行っちゃうんですよね。PCエンジンの(ソフトの)ほうが安くて、スーファミは全然値下げしないのに。
―――値崩れするかどうかって、小学生ゲーマーには大事なことですよね(笑)。押切さんのゲームとの出会いは、やはりファミコンですか? 最初のガールフレンドが親御さんと一緒に来て、本体をくれたという(編集部註:『ピコピコ少年』冒頭収録「初恋少年」)。
押切 そうですね、貴音ちゃんのお下がりですね。いま卒業アルバムを見ても、すっごい可愛いんですよ。中学生時代のときに5人の男から言い寄られていて、その子たちがケンカを始めちゃったりして。
―――そんな子を独り占めしてたのに、ゲームと引き換えにその子がいなくなっても寂しくなかった?
押切 そうですね。ファミコンに恋焦がれて。

明日美子 でも、動体視力は上がったんですよね。
押切 いや、そんなこともなかったですね(笑)。運動オンチだったし。
中村 貴音ちゃんとは、どんなゲームをやってたんですか?
押切 えっと『ギャラクシアン』『イーアルカンフー』『スパルタンX』、あとは普通に『スーパーマリオブラザーズ』とか。それに『ゲゲゲの鬼太郎』ですね。
明日美子 ああ、懐かしい。
中村 キャラゲーとしてはかなり良かったですよね、『鬼太郎』は。
―――でも、かなり厳しいゲームじゃないですか?(笑)
中村 あれは恐怖感の演出が上手いんですよね。地獄に落ちたときに、見上げ入道がどアップで映るんですよね。バックベアードもブワーッと(笑)。
―――中村さんも、そのあたりがゲームのルーツだったりするんですか?
中村 うちは最初、ファミコン本体は買ってもらえなくて。「じゃあソフトはいいでしょ?」って言って、『スーパーマリオ』だけを買ったんですよ。当時は『スーパーマリオ』が品薄で、本体を持っていてもソフトがないっていう状況でしたから、ファミコンを持ってるだけで人に呼ばれるんですよね。それで、人の家で『スーパーマリオ』をやってたんです。便利屋として(笑)。
明日美子 そんなことやってたっけ?
中村 やってたよ。
明日美子 きったねえなあ(笑)。
―――そこは持ちつ持たれつですよね(笑)。
中村 親が「これはマズい」と思って、ファミコン本体を買ってもらって。でも、ファミコンの人気がありすぎて、抱き合わせ商法でセットで2万円みたいな感じだったんです。あやうく買ってもらえないところだったんですけど、そこはプライドを捨てて、泣き落として(笑)。
押切 何歳ぐらいのときですか?
中村 小学校の高学年ですね。これが最後のチャンスかなって(笑)。その抱き合わせのソフトが、また酷くって。
押切 なんだったんですか?
中村 『頭脳戦艦ガル』とか。
明日美子 あと『バイナリィランド』とか。クリアできないんだよね。
中村 そうそう、まともだったのは『スターラスター』ぐらいで、あとは『マッハライダー』もあったかなあ。
明日美子 買った夜には(ファミコンと)一緒に寝たんだよね。
中村 そう、箱ごとフトンに入ってましたね。
押切 いい話ですねえ。ファミコンが終わるたびに箱に入れたりしませんでした?
中村 いや、僕はね、いつでも見ていたかったので(笑)。
押切 あー僕は律儀に箱の中に入れてましたね(笑)。
―――お互いの愛情表現は違うんですね(笑)。
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ホラーギャグマンガ家として『ヤングマガジン』誌でデビュー。以降、本格ホラーから叙情派青春ストーリー、4コマまで、つねにテンション高い作品を発表しつづける。『ピコピコ少年』シリーズの他、著作に『でろでろ』 『ドヒー! おばけが僕をぺんぺん殴る!』 『おばけのおやつ』 『ゆうやみ特攻隊』 『サユリ』 『ツバキ』 『おどろ町モノノケ録』など。
男女3人からなる8ビット音楽ユニット「YMCK」の映像&作曲を担当。2004年に発売した1stアルバム『ファミリーミュージック』の大ヒットをきっかけに、幅広い世代の支持を受けている。国内のみならずフランス、スウェーデン、オランダ、アメリカ、台湾、タイ、韓国など8ヶ国以上で国際的なフェスやイベントに出演、世界的にも高い評価を獲得している。YMCKの公式ホームページはこちら。
2000年に『マンガF(現マンガ・エロティクス・エフ)』より『コーヒー砂糖いり恋する窓辺』でデビュー。以後、美しく艶やかな描線と圧倒的な物語力で、官能的なストーリーから爽やかな青春もの、ボーイズラブまで魅力あふれる作品を数多く生み出している。主な著書に『ウツボラ』 『Jの総て』 『ばら色の頬のころ』 『同級生』 『ノケモノと花嫁』など。