小林よしのり(マンガ家)×奥田愛基(SEALDs)――「対話」

SEALDs(Students Emergency Action for Liberal Democracy-s――自由と民主主義のための学生緊急行動)による、いわゆる安全保障関連法案に警鐘を鳴らす抗議行動が、さまざまな世代のさまざまな思想の人々を巻き込み、大きな流れになっている。
7月11日、マンガ家の小林よしのり氏が自身のblogにアップした、「シールズとかいう若者にやや好感」というエントリーもその一端だろう。氏は一般的に右傾化の要因となったと評される『戦争論』シリーズの著者だが、現・安倍政権に対しては批判的だ。曰く、「シールズとかいう若者たちは、ちゃんと安保法制の中身を読んで議論してるのだな」「学生運動の時代より、おとなしい若者たちだが、知的である」。はたして、反・安保法制というシングルイシューの下で両者が出会った時、どんな対話が生まれるのか? 8月8日、初の対談が実現した。

2015年9月 2日公開

――まず説明しなければいけないのは、今日、本来はSEALDsからここにいる奥田愛基さんともうひとり、牛田悦正さんという方が来るはずだったんですが……。

小林 知ってるよ。そういうことを教えてくれる人がいるわけ。わしと対談することをTwitterでいろいろと言われて、来るのが嫌になったんでしょう?

奥田 いえ、そういうわけではないんです。僕の口から説明させていただくと、自分たちがいわゆる社会運動の団体と違うのは、トップダウン型じゃないんですね。また、動員があるわけでもなく、ひとりひとりが個人として集まってやっている。だから、意見もひとりひとり全然違うんです。護憲派の人もいれば、改憲派の人もいて。

小林 なるほど。

奥田 バックグラウンドも、歴史認識も、支持政党も、ひとりひとり違う。ただ、「いま言わなくちゃいけないことがある」という一点の下に集まっている。で、実はこの対談は牛田くんをメインに考えていたのですが……。

小林 あ、そうなの?

奥田 ええ。本当は僕というよりは彼がメインだったんです。でも、牛田くんは予習として小林さんの著作を読んで、あらためて自分とは相容れない部分が多いと感じたようで。そして、対談が決裂した時に、後日、マンガで酷い感じに描かれるのではないかと。そうなると、SEALDsの他のみんなにも迷惑をかけると思ったようなんですね。

小林 わし、昔みたいに論争している相手の似顔絵を描くようなマンガは、もうほとんど出していないんだけどね。

奥田 予習で昔の作品を読んでいたので、そのイメージもあったと思うんです。

小林 というか、知ってる? わしのこと。

奥田 僕自身は、小林さんが、最近、どういうことをおっしゃられているのかはちゃんと追えていないので、昔の『戦争論』(98年7月に第1巻、01年10月に第2巻、03年7月に第3巻を幻冬舎より刊行)とかのイメージで……。

小林 〝ネトウヨの生みの親〟、みたいな感じ?

奥田 え、まあ……。それで、昨日の夜中、牛田くんが急に「対談に行かない」と言い出して、僕は「それはいくらなんでも失礼だろう」って説得したんですけど、彼の考えは変わらなくて。そのことに関しては申し訳ないです。

ただ、彼の心配も分かるというか、今、SEALDsってさんざん叩かれまくっていて。自民党の武藤(貴也)議員(7月30日にSEALDsについて「自分中心、極端な利己的考え」とツイート。対談後の8月18日に自由民主党を離党)には〝利己的〟と書かれ……。

小林 あれは酷いよな。

奥田 他にもいろいろ。で、そういう状況下だということもあって、「じゃあ、僕ひとりで行ってくるわ」と。まぁ、さっきも言ったように、僕らは意見がひとりひとり違う団体ですし、そもそも、仕事でやっているわけでもないですし。これが本業でもないし、一生、政治活動をやっていくつもりもないし。

小林 その牛田くんっていう子はナイーヴなんだね。別に対談を〝闘って勝ち負けを決める〟とか、そんなふうに考える必要はないんじゃない?

奥田 そう思ったんで、僕は来ました。

小林 ただ〝話し合う〟っていうことでいい。で、わしとしては今日、まず、きみらに〝守りたい〟っていう気持ちを伝えたかったわけ。

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  • プロフィール
小林よしのり KOBAYASHI YOSHINORI

昭和28年、福岡県生。マンガ家。代表作『東大一直線』 『おぼっちゃまくん』など。平成4年、「SPA!」(扶桑社)にて、社会問題に斬り込む『ゴーマニズム宣言』を連載開始。同シリーズのスペシャル本として発表された『戦争論』 『戦争論2』 『戦争論3』(すべて幻冬舎)は言論界に衝撃を与え、大ベストセラーとなった。平成24年からは「ゴーマニズム宣言『大東亜論』」(小学館「SAPIO」)を鋭意連載中。最新刊は本格的な戦争マンガ『卑怯者の島』
小林よしのりオフィシャルwebサイト

奥田愛基(SEALDs) OKUDA AKI

平成4年、福岡県生。現在、大学4年生。SEALDsの中心メンバーのひとり。
SEALDs webサイト